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同時通訳の草分け、國弘正雄氏が亡くなられた(2014年11月25日)。
筋金入りの護憲派(憲法九条)であられた。
来る4月7日の「偲ぶ会」(於:国際文化会館)を前に、同氏へのインタビュー
(2007年9月4日。於:国際文化会館)をここに再現する。
かねがね聞きたかった3点、「日本の英語教育について」「憲法9条(護憲主義)について」「新渡戸稲造(武士道)について」はそれぞれ、大きなテーマである。
折しも(2007年)、日本最大手英会話学校NOVAが10月26日、会社更生法の適用を大阪地裁に申請し、不信感が広がり、他の英会話学校にも大きな打撃を与えてる。その法律違反(授業料問題、労働問題)は論外としても、これだけの「英語熱」の日本において結果として「英語力」が向上してない真の原因はなへんにあるのか?他方、国会でその延長問題が争点となっている、11月1日で期限が切れる「テロ対策特別措置法」にかかわる、自衛隊派兵問題の根にある日米問題をどう考えるべきなのか。
この2つの差し迫った重要点より、知米派であり、優れた英語教育者であり、頑なとも言える根っからの護憲派である同氏の思いを披瀝したい。
1.日本の英語教育について:
「酷い(ひどい)」のひとこと。「言うことなし。ノー・コメント」とにべもない。あまりにストレートなので心配したら、「良いからそう(=ノー・コメントと)書いてくれ」とのこと。
ここでは、著書「國弘流英語の話しかた(たちばな出版)」から彼の主張する多読の有意義を挙げたい。「精読し、只管朗読、それが多読につながっていく。」この只管(ひたすら)という言葉に思いが詰っている。
この点は拙稿「NOVAの「品質保証」は?」の通り、「教えた結果がどうなのか?」という責任の問題であり、「スピーキング力」(ゆめゆめペラペラになることではない)こそ日本(人)がもっと精進せねばならない、という主張に合致する。
筆者なりの解釈では「読む」「聞く」「書く」「話す」という英語学習のいわゆる4技能のうち、前2者はInput(入力)、後2者はOutput(出力)であり、つまり、InputのないところにOutputはない、ということであろう。「その解釈でよろしいですか?」との問いに「よろしい」とのご託宣でホッとした。
2.日米関係について
「太平洋の架け橋」という思いが(國弘氏の)生涯の原点である。札幌農学校でキリスト教徒になり、中学時代に東大の面接官に思いを訴え、「太平洋の架け橋」となった新渡戸稲造の伝記に感銘を受け、凡人である自分は「太平洋の架け橋の橋桁」になることを目指すべく、英語の猛勉強を開始した、と語る。
そして、数少ない(=とはっきり言う)尊敬すべきアメリカ人として、躊躇せず、マンスフィールド元駐日大使を挙げる。マンスフィールド氏は年齢をごまかし海兵隊に入り、青島(チンタオ)から佐世保に駐留した経験がある。モンタナ大学および同大学院で歴史を専攻。一つは中南米史。一つは東アジア史であった。
(國弘氏)自身でカーター(元)大統領に確かめたところだが、上院の重鎮であった同氏はカーター大統領から駐メキシコ大使の打診を直ちに断った。「米国の中南米に対する歴史を誇りに思えないから」ということで一蹴した由。同氏の信念であった。後に民主党の最長老でありながら徹底的にベトナム戦争に反対した、という気骨にも感動を受けた(と、マンスフィールド氏の話になると國弘氏の目に涙がうかぶ) 。 参照:モーリーン&マイク・マンスフィールド財団
このあたり國弘氏の気骨、信念についてはいくら紙面があっても足りないが、鳥飼玖美子氏の「通訳者と戦後日米外交(みすず書房)」の國弘氏に対するインタビュー記事に詳述されている。
西山千、相馬雪香、村松増美、國弘正雄、小松達也、各氏への貴重なインタビューのうち、「國弘正雄氏ひとりが(同時)通訳という仕事をやりたくなかった」と吐露している由。又、(当時)三木首相の秘書官になる時に「自分は自民党に票を入れるかどうかわからない」と言い、「それでもよし」という返事に感動して、「三木を男にしよう」と思ったとのこと。
因みに、「ノーベル平和賞・九条」に強く賛同して下さった奥平康弘教授(1月26日逝去)の偲ぶ会が、奇しくも、4月3日に行われる。
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