文部科学省は、小学校において英語を正式教科にすることや、中学校の英語の授業を英語で実施することなどを基本とした実施計画をまとめました。日本の英語教育が強化されることになるわけですが、効果はあるのでしょうか?
日本ではかなり以前から英語教育の重要性が叫ばれ続けていますが、日本人は依然として英語が不得意です。国際的な英語力比較調査を行っている民間企業の調査では、一般的な日本人の英語力は低く、世界ランキング21位です。日本の順位の前後には、韓国、フランス、イタリアなど、一般的に英語が通用しにくい国が並んでいます。ちなみに「英語力が非常に高い」と区分される1位から5位は北欧やオランダなど欧州のゲルマン圏諸国が独占しています。
母国語だけで情報得られる国
英語が身近でないせいか、日本では英語ができる人が「優秀」と見なされる傾向は強く、楽天のように社内公用語を英語にした会社もあります。一方で日本は、母国語のみで世界水準の学術情報やビジネス情報の多くを手に入れることができる恵まれた国の一つであり、これが実現できているのは、日本以外では、英語圏、フランス語圏、ドイツ語圏くらいしかありません。
今回の取り組みでは、小学校で英語が正式教科となるほか、中学校では英語の授業が英語で行われることになります。また高校では授業内容が高度化されるとともに、大学入試にはTOEFLなど民間の試験が導入されることになります。ただ、この取り組みの具体的な効果については懐疑的な声も少なくありません。
英語学習をどのように進めればよいかという方法論には様々なものがありますが、外資系企業や海外展開している日本企業の中では、英語学習は絶対的な時間数が極めて重要であるとの考え方が一定のコンセンサスを得ています。
英語上達には2000時間必要?
例えば、出張など仕事で英語が必要となった場合、2000時間を超えると多くの人が自由に会話ができるようになるといわれています。外国に留学したり赴任すれば、丸一日英語になりますから、1日10時間は英語を勉強することになります。200日現地で生活すれば2000時間を達成することが可能となります。1年近く外国にいれば、たいていの人は英語が出来るようになっているという状況を考えると、この2000時間という数字は現実的といってよいでしょう。
一方、高校卒業までの英語の授業時間数は900時間程度しかありません。学校の授業だけで本格的に英語を上達させるためには、従来の3倍以上の量をこなす必要があるわけです。今回の取り組みでは、内容はともかくとして授業時間数としては200時間程度しか増えません。早い段階から英語に慣れさせることで、その後の学習効率を上げる効果はあるかもしれませんが、日本人の英語力が急激に上達する可能性は低そうです。
英語は非常に重要なツールですが、大多数の人にとっては、英語がなくても生活や仕事には困らないというのも事実です。何のために英語学習を強化するのかという、根本的な議論がもっと必要なのかもしれません。(The
Capital Tribune Japan)