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生活保護申請者の「家族に知られたくない」を無視してきた“扶養照会”をめぐる闘い③
これまでは、生活保護申請者が扶養照会を嫌がると、「決まりだから」「法律だから」などと個人の事情や意向は無視されてきたのだが、今後は「扶養照会をしてほしくない」という申請者の意向を尊重すべきという規定が追加された、これは心が震えるほどに大きな変化だ。
加えて、扶養照会を行うのは、「扶養が期待できる場合」に限ることを生活保護手帳と並び、福祉事務所の職員がバイブルとしている「生活保護手帳別冊問答集」に明記するというのだ。
生活保護手帳には法的拘束力があり、書いてある処理基準を破れば違法。しかし、別冊問答集は保護手帳ほどの法的拘束力はない。がしかし、保護手帳に準拠する参考資料であるため、ここに明記されることの意味は小さくない。
自力でやれるだけのことはやったが、どうにも生活が困窮してしまったら、是非、生きるために生活保護を申請してもらいたい。そんなときに「扶養照会はしないでほしい」ということはワガママだろうか?「家族に心配をかけたくない」「家族との縁を切られたくない」「関係の悪い家族に知られたくない」そう思うのは自分勝手だろうか?いや、そんなことがあるわけがない。少しでもそう思う人は、この記事を最初から読み直してほしい。
本年4月1日から個人の意思が尊重されることになった。
この新しい事務連絡は、福祉事務所のまともな職員たちを多いに励ますことだろう。著者自身、生活保護の申請同行をする中で、「扶養照会なんてしたくない。作業は増えるし、切手代もバカにならないし、したところで援助できる人はほとんどいないだけでなく、親族からも申請者からも嫌われる。申請者との信頼関係も築けない」とボヤく職員たちを見てきた。
しかし、一方で「扶養照会で脅かし、決定権は我にありというマウンティングをしたい」とか、「受け持ちを増やすくらいなら扶養照会で脅かして追っ払いたい」と思う職員がいないとも言えないのが悲しいところだ。
所持金が尽きて借金もかさみ、家も喪失したり、しそうになったりして、もう死ぬしかないとまで思い詰めた人たちに対して、「よく相談に来てくれましたね」と迎え、扶養照会も本人の意向をしっかり聴いて、なんとか意向に沿うように心を砕いてくれる職員であれば、相談者は文字どおり、地獄で仏に会ったような心持ちになり、明日を生きる意欲も湧くというものだ。
しかし、「おまえの嘘を暴いてやる」という閻魔大王気取りにあたる場合もある。命と生活を守る福祉事務所に閻魔大王は要らない。万が一、そんな職員に当たってしまった場合はどうしたらいいのだろうか。
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